地元愛が高じて桃の瞬間冷凍商品を開発、国内外に売り込みをかける福島の「桃ガール」
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2017.12.25
福島県は山梨に次いで全国2位の桃の生産地。国内の21%の桃を生産しています。品種で特に有名なのが「あかつき」。果肉が締まった固めで甘い桃は珍しく、全国に多くのファンがいます。しかし桃は収穫時期が短く夏の短い期間しか獲れません。そこで、瞬間冷凍の技術を使い1年中フレッシュな桃を味わえる商品を開発した女性がいます。「株式会社ももがある」の代表取締役 齋藤由芙子(さいとうゆうこ)さん。齋藤さんは、新商品を開発しただけでなく、持ち前の行動力で自ら海外に販路を求め、わずか2年目にして海外輸出の道を切り開きました。齋藤さんに詳しくお話を伺いました。

齋藤由芙子(さいとうゆうこ)さん 福島市生まれ。福島の桃を使った商品を主力とした農産物加工食品会社「ももがある」の代表取締役。高校卒業後、仙台の音楽大学へ。卒業後は仙台の放送局にてディレクターとして3年勤務する。同時進行でやっていた音楽活動を本格的にやるために退職。その後は数年間、音楽活動とアルバイトをしながら東京を行き来する生活をしていた。その後、ヴォイストレーナーやゴスペルディレクターに転向しつつ飲食店に勤務。震災をきっかけに福島へ戻るが、音楽で被災した人々を元気づけるために、改めてボイストレーニングを学びに2012年、海外へ短期留学を3ヶ月した。帰国後はまちづくりのNPOに勤務し、そこで福島の桃を瞬間冷凍させた無添加食品「ももふる」の着想を得る。ももがある公式ホームページ https://momogaaru.co.jp/
■「ももふる」とは?
ー齋藤さんが開発された「ももふる」について教えてください。
齋藤由芙子さん(以下 齋藤):ももふるは「いつでも生の桃が味わえる」をコンセプトに、福島県の美味しい桃を1個まるごと瞬間冷凍した無添加の新感覚スイーツです。桃は夏しか食べられない果物ですが、非加熱で果実をそのまま凍らせ、風味の調整も最低限の砂糖とレモンだけでおこない、いつでも生の桃に近い味を楽しむことができる商品です。
ー商品は何種類あるのですか。
齋藤:福島では50種類以上の桃がありますが、そこから厳選し、「あかつき」、「まどか」、「川中島白桃」、「ゆうぞら」、「黄貴妃」の5種を選びました。
ー今年(2017年)は功績が認められて、福島民報社の「ふくしま産業賞」の特別賞を受賞されましたね。おめでとうございます。どんなところにこだわっているのですか。
ありがとうございます。ももふるになる桃は厳選された福島の若手農家から買い付けています。これまで、出荷基準に満たない完熟桃は廃棄されるか、安値でジュース用に販売されるだけでした。それをうちでは農家さんが納得できる価格で買い取って商品化することで、ももふるの事業が若手農家さんと桃の栽培の継続の支援につながればと思っています。
■「もったいない」から始まった
―斎藤さんが「ももふる」を作ることになったきっかけは何でしょうか。
「ももがある」を立ち上げる前の職場が福島のまちづくりを主題にしたNPOでした。そこで福島の資源を見直すために桃農家さんを訪問したとき、出荷基準に満たなかった完熟の桃がたくさん積まれているのを見て、「もったいない!」と思いました。でも桃の収穫時期は一定期間に集中するため、桃農家さんは収穫だけで忙しく完熟桃の加工や販売まではとても手が回りません。「もったいないから誰かが引き取ってもらえると嬉しいんだけどね。」そんなつぶやきを聞いたのが「ももふる」誕生のきっかけです。
―果物の加工品といえばジャムが一般的ですが、瞬間冷凍の食品にした理由はなんですか?
齋藤:ジャムはもうすでにたくさんあったので、参入は難しいと思いました。なので最初はピューレを作るつもりでした。今、日本で販売されているピューレの大半が外国産なので国産のピューレを作ったらどうかと。そこで、市内にある桃の漬物を製造する工場で2015年より試作品を作り始めました。やってみると、液体状のピューレは空気に触れる面積が大きいため酸化が早く、変色しやすいことに気づきました。それを解決するため昼夜試作に励む中で、一口大に切って冷凍した桃のほうが変色も遅く、より生の桃の味と食感に近いことを発見して、方向性を変えたのです。
―そこで一気に商品化が進んだのですね。
はい。ところが、それまで試作品を作っていた工場が廃業をすることになってしまいました。そこで意を決して、工場だけでなく販路も譲ることを条件にその会社を買うことにしたのです。大きな決断でしたが、今年は夏の加工時期には10人ちかく携わっても追いつかないほど忙しくさせていただいています。
■消費者の反応
―全国の展示会に積極的に出向かれていますが、消費者の反応はいかがですか。
おかげさまで好評です。特に北海道や沖縄の反応がすごくいいです。この2つの地域は気候的に桃が収穫できない地域で、美味しい桃がなかなか食べれない上、価格もとても高いんです。だから品質の高い福島の桃で作った生に近い状態のももふるはとても喜ばれます。関西は手で皮がむけるほど柔らかい桃が一般的なので、福島の桃の固さにまずびっくりされ、しかも砂糖漬けにしていなくてもとても甘いことに驚かれます。また、実演販売でももふるをまるごと削ってかき氷にしたときは、とても甘くて美味しいと大きな反響を得ることができました。
■海を渡る「ももふる」
―最近、海外へ渡航されて直接商談を取り付けたと伺いました。
齋藤:そうなんです。ももふるは来年より海外での販売が決まっています。海外進出は当初から考えていて、これまでも国内で開かれる日本食の輸出フェアなどにも積極的に参加してきました。どの商談でも商品の評価は非常に高かったのですが、なかなか輸出という結果に結びつけることができませんでした。そこでシドニーに住んでいたことのある友人のつてを頼って、2017年10月に現地へひとりで乗り込み、商談をすることにしました。専門業者さんに商談を頼むこともできたのですが、自分の言葉のほうが「ももふる」にかける熱量が伝わります。シドニーで商談をした日系のスーパーマーケットを運営している「Jun Pacific」は東北のサポートなどを積極的に行っている会社でした。ももふるのコンセプトや品質の良さを認めていただき、その場で輸出を確約してもらえました。2017年12月17日には英語のラベルが貼られたももふるがオーストラリアへ向けて旅立ちました。

シドニー市内にあるJun Pacificが運営しているTokyo Mart
出典:Tokyo Mart
―今後も輸出は積極的に行っていく予定ですか。
はい、今後はオーストラリアだけでなくヨーロッパ・北米にも商品を展開していきたいです。欧米のシェフは創作意欲が高い人が多いので、ももふるを使ったレシピを提案しつつレストランでも使ってもらえるようにしたいと思っています。継続的に海外にも売り込んで、ももふるが世界中の人々に浸透していけばいいですね。
■福島の子供たちへの教育ツールとしても
―今後の展望をお聞かせください。
齋藤:去年の秋よりももふるは本格的な販売をはじめました。来年までの3年間はももふるの良さを国内外に知ってもらうためにいろいろな所に出店しようと思っています。それと同時に飲食店や学校と連携もしています。特に、福島の子供たちは自分たちの町が桃の産地であることは知っていてもどんな品種があるかまでは知らない。そこで、ももふるの5種類の桃を使って味の違いを体験してもらったり、夏場は出荷を体験してもらったり、工場でももふるを加工してもらったりして、農業と加工の現場をより多くの人知ってもらえるような活動をしています。
体験を通して興味を持った学生が「ここで働きたい」と言ってくれたこともありました。ももふるを広めることはもちろんですが、生産の現場を知ることで、農業に関わる人の数がもっと増えてくれたらうれしいですね。
飲食店ではももふるを使った料理やカクテルを提供してもらっています。いずれはこのような活動を通して桃の専門知識を持った「桃マイスター」の制度をつくるのも面白いかな、と考えています。
■ももふるを使った料理
最後に、ももふるを使った料理を紹介していただきました。(協力:サイトウ洋食店)
<四種類のチーズとももふるのピザ>
甘い桃とチーズが絶妙!ピンクペッパーがアクセント。サイトウ洋食店の人気メニュー。
<自家製カスピ海ヨーグルトマチェドニアのせ>
フレッシュな桃がメインのフルーツヨーグルト。ねばりの強いカスピ海ヨーグルトと桃がよく合います。
<ももふるのスパークリングワイン>
スパークリングワインにももふるを加えるだけ。味の良さはもちろん、薄ピンクのももふるが可愛らしい簡単カクテル。
【「ももふる」お年玉プレゼント!】
「ももがある」さまより、メディアロケットの読者に特別にプレゼントを用意していただきました。5種のももふるがセットになった人気の商品「ももふるギフトセット(贈答箱入り 2,150円相当)」を3名様にプレゼントいたします。
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