「けるぷ農場」の楽園チックな鶏舎でヒヨコたちが教えてくれたこと
幸せオーラを振りまくヒヨコ集団
2018.05.11
■肥料なしで作物を育てる農場
福島県郡山市の郊外で自然農法を行う「けるぷ農場」を訪れました。
ここは無農薬というだけでなく、堆肥などの有機肥料さえも一切使わず、自然のエネルギーだけで作物を育てています。作っているのはグリンピース、いんげん、きゅうり、ミニ人参、大麦などの穀類、そして金ゴマ、黒ゴマなどなど。
肥料を使わない理由は、使うと害虫や雑草が増え、自然との共存が難しく収量も安定しないからだそうです。

この日は朝から雨。露に濡れる麦たちが美しい。
「けるぷ農場」社長の佐藤喜一(さとう・きいち)さん。喜一さんは2代目。ハットと長靴がキマってますね。

音楽家(パーカッショニスト)としての顔も持つという喜一さん。
けるぷ農場はもともと養鶏をメイン事業として行ってきましたが、2011年の東日本大震災によって大きな打撃を受けます。
売上8割減。
やむなく養鶏を断念し、この土地や気候にあった作物づくり、土作りの研究をしながら野菜や穀物の生産を行ってきました。
でも、喜一さんが本当にやりたいのは鶏。
また鶏を育てたい。
そして震災から7年目となった今年の春、ついに養鶏を再開することになりました。
■のびのびとしたヒヨコたちの姿に感動
「あそこにヒヨコがいるんですよ」
喜一さんが指さした先は大きなビニールハウス。
案内されて中に入った瞬間、見学の11人全員が「わーっ」と歓声を上げました。
「ピヨピヨピヨピヨ」という元気な鳴き声。
懐かしいヒヨコの匂いと干し草の匂い。
一面に敷き詰められた草の間に200羽のヒヨコたちがせわしなく動いていました。
幸せそうに鳴きながら自由に動き回って餌をついばむヒヨコたち。
時折、何かのきっかけで一斉に運動会のように走り回ったり、とにかく可愛い。
「この鶏たち、幸せですよねー」
見学者ほぼ全員から同じ言葉が漏れました。
なにしろ、この鶏舎だけで十分広いのに・・・
なんと、昼間はこんなふうにドアを開放し、屋外で放牧をしているというのです!
そして驚くことに、鶏たちが飲んでいる水は、近くの酒蔵「仁井田本家」の仕込水なんだそうです。
仁井田本家は300年の歴史を持ち、すべての仕込を自然米と自然派酒母で行う酒造りで有名で、仕込水は自社の山や井戸水からの天然水を使用しています。
「作物で試したら、水道水と天然水では発育が全く違うんです。だから鶏用に水をわけてもらうことにしました」と喜一さん。
実は仁井田本家の十八代、仁井田穏彦さんと喜一さんは仲が良いのです。
この町(田村町)のこの一帯、とんでもなくオーガニックなネットワークがあるエリアなんですね。
■「幸せな鶏」を育てる意味
水は天然水、餌はもちろん自然農法で作った作物。広い鶏舎で太陽光もたっぷり浴びる。
まったくもって贅沢で幸せな育てられ方をしているヒヨコたち。
このヒヨコは名古屋コーチンのひな鳥で、この秋に食肉として出荷されます。
そう聞くとなんだか生々しい。
結局は食べられてしまう(食べてしまう)という意味では、一般的な養鶏場で工業的に育てられる鶏と同じなのか。
そんな考えも一瞬脳裏をかすめましたが、喜一さんの言葉にはっとしました。
「世界一幸せな鶏を育てたい」。
森の中で鶏が遊べば農地がよくなり、森の再生、山との共生につながる。
少し哲学的な喜一さんの話を伺いながら、「幸せ」という言葉が心に刺さっていました。
これまで肉でも魚でも、そして野菜でも、食べ物そのものが「幸せかどうか」などと考えたことは一度もありませんでした。
でも、このヒヨコたちを見たとき、身も蓋もないのですが、
「こんなに幸せに育てられた鶏は美味しいに違いない」と確信したのです。
味もそうですが、絶対に「幸せ成分」が入っているはずだと。
幸せは「健康」とも置き換えられるかもしれませんが、
単に健康というだけでなく、愛情をこめたケアの結果としての健康というか。
そして、そういう幸せ成分が入っている鶏は、それを食べる人間をも幸せにしてくれるはず。
もちろん、それは鶏に限ったことではないでしょう。
まさか養鶏場で「幸せ」というキーワードが出てくるとは思っていませんでしたが、
「ピヨピヨピヨピヨ」という無邪気なかわいい鳴き声を聞きながら、
「私はこのヒヨコたちほど幸せだろうか」
と、自問せずにはいられませんでした。
この名古屋コーチンは、当然一般的な鶏の何倍もの価格になりますが、
これは絶対に食べてみたい。
でもその前に、もっと大きくなった鶏たちに会いにまたけるぷ農場を訪れたい。
そう喜一さんに言ったら、
「どうぞ、いつでも来てください」とさわやかな笑顔で返してくれました。
*****
福島の「イケてる生産者」を紹介する「食大学」のWebサイトに喜一さんのインタビュー動画が掲載されています。
ぜひお話を聞いてみてください。(このサイトは、ほかにも素敵な生産者さんの情報が満載です)
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