初夏に楽しむ日本酒ペアリング〜林智裕の「ウチにおいでよ!」Vol.1

今日はこんな感じで家呑みしませんか。

2018.06.13

日本酒

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人気ライター・林智裕さんの新連載「ウチにおいでよ!」。テーマは「家でできる日本酒ペアリング」。日本酒通で知られる林さんの渋い日本酒セレクション、そしてお酒にあう簡単おつまみをお楽しみください。

さぁさぁ、初めましての方ははじめまして。おなじみの方は、ご機嫌麗しゅう。

林智裕の「ウチにおいでよ!」に、ようこそ♪

最近は梅雨に入って、すっかり雨ばっかりだね。

気も滅入りがちだけど、でもまあ酒飲みにとっては雨も肴の一つみたいなもん。しとしと降ってる雨音と雨の匂いなんかを楽しむ風流な一献…なんてのも、悪くないよね。( *´艸`)

ん?なんかやたらと馴れ馴れしくないかって?

それはね。このコーナーが「お家に呼んだ気心知れた友達と少人数で一緒に飲むテンションで、林のいつもの晩酌を一緒に楽しんじゃおう♪」というコンセプトだからだねー。

ほら、お酒ってやたらと高級だったり珍しかったりするお酒やウンチク語るものじゃないと普通は記事とかにはなりにくいけどさ、もうちょっと、こう、なんていうのかな。
お酒はもっとさ、他愛もない日常と一緒にあってもいいと思うんだ。

珍しいお酒や高級なお酒を集めてみたり、高度で専門的なウンチクを語るのもそれはそれで楽しいんだけどね。あまり肩肘張らずに、友達と一緒に楽しく飲んでるような気分になれるようなお酒の記事があってもいいじゃない?なーんて。

だからこれからいろいろ出していくお酒とかおつまみは、結構気まぐれ。スーパーでも買えるような普段使いのものから、ちょっと特別な一品もあったりとか、とにかく、いろいろ出しちゃうよー。
林が普段やってる晩酌を紹介…というよりも、一緒にお酒飲んでる感じで楽しんでもらえれば嬉しいかな。(*´▽`*)

─────

ささ、じゃあ早速、お酒一本開けてみようか☆

今日用意したお酒は、南郷吟醸「つう」。ちょっとだけど、お刺身も用意しちゃったよ-。美味しそうでしょ?
あ、盛り方がちょっと雑なのは勘弁してね。(笑)

まあ、めんどくさい話は後にして、とりあえずぐぐーーーっといっちゃいましょ♪
はい。かんぱ~い♪おつかれさまー。
いいよねー。こうやってお酒を一緒に楽しく飲めるのってホント幸せだし、一番最初の乾杯のわくわく感って、なんか好きなんだよねー。これはもう、お酒を飲み始めたころの昔も今も変わんないのさー。

で、どう?味は。
結構スッキリしてるでしょ?吟醸だけど香りが強すぎないし、辛口だけどキツすぎないから、なんていうかゴクゴク飲めるよね。かといって水っぽい訳じゃなくて旨味も強いし。
この季節に飲むのにぴったりだよね。
へへ-。実はこのお酒、ちょっとお気に入りなんだ。同じく気に入ってくれたら嬉しいんだけど。

このお酒は福島県のあぶくま高原、県内でも一番南部にある矢祭町の矢澤酒造店さんからだね。
あぶくま山系のお酒って結構ゴクゴクいけちゃうこういうお酒多い気がしてるんだけど、県南のお酒はその中でも結構辛口寄りだよ。このお酒もそんな感じ。

─────

あ、せっかくだからおつまみも食べよ?
今日用意した刺身は、何の魚だと思う?これ当てたらちょっとすごいかも。
え? ヒント? いや、難しいんじゃないかな。白身の魚ってめっちゃ種類あるし。

この刺身はね、「カナガシラ」っていう魚の刺身。ホウボウをもっと小さくしたようなお魚。安くて、魚市場では一皿何百円、みたいに売られてるし小さくて食べるところあんまりないんだけどね。(笑) でも、味は結構美味しいんだよー? あんまりお店では売られてない魚かもだけど。
でも今回のコレは、スーパーに並んでたんだよね。ラッキー♪

さ、どーぞ。美味しいうちに召し上がれ。
白身で淡泊だけど、口当たりがけっこうぷりっぷりでしょ? 自分で捌こうとするとこの魚、身が小さいのに背骨ガッチリしてるし、結構めんどくさいんだよね-。やっぱり、プロに任せて手抜き出来ちゃうと楽だね。
じゃあ、ボクも一口…

んーーー♪♪ しーーあーーわーーせーー♪ やっぱり美味しい。ぷりっぷりー。( *´艸`)
結構新鮮だから、適度にコリコリした歯ごたえもあるし、魚自体に旨味もある。付け合わせたワサビの香りもちょっと混じって、ホント日本酒に合うよねー。
そもそも、この「つう」の仄かな吟醸香と心地良いキレの良さ、あと、ゴクゴクいけちゃうこの味わいは、お刺身にぴったり。ついつい、飲み過ぎちゃいそう。

ん?おっと、お猪口が空になってるね? ごめんね気がつかなくて。

ささ、どうぞどうぞ、もう一杯、ぐぐーーっと♪
おつまみに合わせると、日本酒ってもっともっと美味しくなるよね。ただでさえ美味しいのにもっと美味しくなっちゃって、どうしてくれるの? って感じ。

そういえばこの魚ね、獲れたの福島県沿岸、常磐沖なんだけど、この辺の魚って「常磐もの」っていう料亭でも使われる高級ブランド品だったりするんだよね。

たとえ他の地域でも獲れる魚種でも、このへんの魚はちょっとモノが違うのだとか。

「常磐もの」って、具体的にはスズキとかマゴチ、ヒラメ、アナゴ、ヤナギガレイみたいな白身の魚が多いんだけど、まあ、この際カナガシラも入れちゃっていいのかな? 多分いいよね? 美味しいし。
…なんて考えると、今食べてるのって、高級ブランド品のお刺身? なんだか贅沢気分だね♪ はい、贅沢気分を祝して改めてもっかい、かんぱーい♪ (スーパーでなんびゃくえん、なんだけどね)

─────

そうそう、「常磐もの」といえば。その常磐ものに合わせるためのお酒なんてのも、今日は用意しちゃってたんですよー? ふふ。喜んでくれるかな?

はい。じゃーーん。磐城壽(いわきことぶき)純米酒アカガネ。こっちのお酒も試してみて?

あ、急いで飲まなくてもいいからね? お猪口空いてからで。あ、やっぱり、別のお猪口持って来よっか? せっかくだし。

ささ、これまたお猪口にどーぞ。ぐぐーーっと♪

…ふむふむ。こんどはさっきより味がちょっとだけ重めじゃないかって?? あ、そうかもねー。
たしかにこのお酒、結構熟成利かせるタイプのお酒だからねー。自然の力を活かした山廃仕込みってやつだから、力強い味かも。少しだけ、燻製にも似たような風味もあるし。

でも、岡山県産の雄町っていう結構スッキリさせる酒米使っているから熟成させてもモッサリもしないし、なんていうか香りも含めてちょっと独特な味わいだよね。そういえば雄町って米、江戸時代から続く品種の酒米なんだって。コシヒカリよりずっと古くからのお米。なんか、すごいよね。

でもね、この酒、おつまみを合わせるとすごく旨いんだー。
そのままでもまあ、もちろん美味しいんだけど、きちんとおつまみ合わせてあげると凄く「化ける」の。特にね、めっちゃ白身の魚に合うんだよぅ?

なにせね、ここの酒は元々、特に白身魚が美味しい「常磐もの」に合わせるためにつくられてきたお酒。特に、スズキやヒラメなんかのうまーーーい白身のためにつくられてきたのだとか。
こりゃもう、おつまみと合わせるのは乞うご期待! って感じ? まあ、味が強めのお酒だから白身だけじゃなくてカツオの刺身なんかにも相当合うんだけどね。(笑)

と、言うわけだから今度はお刺身を口に含みながら、もっかい磐城壽のアカガネ飲んでみて?

ほら…アカガネのどっしりしたロマンスグレーみたいな味わいが、白身の淡い風味とねっとりとした旨味みたいなのと、上手に絡み合ってくるっしょ? なんか艶があるというか、演奏に伴奏が合わさったみたいな感じ。この絡み、軽く萌えない?

お、いい飲みっぷりだね。(笑) もう一杯いっとく? うまいっしょ?この組み合せ。

お魚と酒を合わせるときには、キレのある酒で魚のニオイを消す…なんていう合わせ方が結構一般的だけど、こっちはそういうのとはちょっと違ってて。お互いの味が足し算になりながらも、こんな風に調和していく感じ? なんだよね。

やっぱペアリングやマリアージュは、奥が深いよね。だから面白いんだけど。

そういえば、今日は魚ばっかりにしちゃったけど、どんなおつまみが好き? 肉系が好きなら、次回はそっちも用意するよ? リクエストしてね。

─────

あ、ちょうどメヒカリも焼けたよー。

この魚も「常磐もの」で、福島県いわき市の名物。市の魚なんてのにもなってるくらいなんだよ。
ほらほら、ほっかほか-。シシャモみたいな感じなんだけど、メヒカリはお皿に滴るくらいに脂がのってるよ??

ほらほら。身はじっくり焼いたソーセージみたいにパンパンになって、こちらもぷりっぷり!だよぅ? 肉汁…じゃなくて魚の脂だけど、食べるとお口のなかで弾けるの。旨そうでしょー?
これもアカガネに合わせると、お酒がまた「化ける」よ? 試してみてー?口の中で魚の旨味がアカガネと合わさって、めっちゃジューシーになるんだから。

あと、箸休めによかったらこんなのも。

枝豆はよくおつまみに使われるけど、こういう「いり豆」なんてのも侮れない。
保存も効くし、おつまみが何にもなーーい!ってときにも、これがあると結構なんとかなっちゃうんだよね。

あ、お猪口空っぽだね? 今度はどっちのお酒飲む? 「つう」に戻す? それとも、もっかいアカガネいっちゃう??
や、それにしても、こうして一緒に美味しく飲めるのは楽しいね。酔い過ぎないうちに、そろそろ和らぎ水も入れとこっか?

─────

そういえば磐城壽ってラベルにちっちゃく「コトブキ」って振り仮名ふってあるけどさ、「いわきことぶき」って一発で読めた?ボクは一番最初は、読めなかった。(えっへん) 古文の成績は悪くなかったんだけどなー…。(笑)
コトブキは「寿」の旧字体だから一瞬わかりづらかったし、視力弱いと遠目では振り仮名読めない…。まあ、そんなもんだよね? え?ボクだけ??

てか、でもでも、日本酒の銘柄って結構読むの難しいお酒とかあるよね?この前も、ツイッターとかで「日本酒にハマりはじめた人あるある」みたいなの書いた漫画が話題になってて。

青森の日本酒、「田酒(でんしゅ)」のこと「たざけ」くださいとか言っちゃって「また読み間違えた恥ずかしい…」と言ってて。ボクも散々読み間違えてきたしさ、あと、ボク的には

『ラベルの文字が達筆すぎて、読めねーーーー………』

…とかも、日本酒では結構あるあるじゃない?ボクだけかな?(´・ω・`)

たとえばだけど…ほら。読める?「せんきん」なんだけど。
や、実際美味しいし、カッコイイんだけどね(笑) ただ…

達筆すぎて、読めねーーーーーーー………orz

あとね。この漫画の中で「おつまみどうですか?」 って聞かれて、ついホタルイカの沖漬け頼んじゃってるけど、「ほんとは、ピザポテトくいてぇーーーーーーーー」みたいに言ってるのも確かに「あるある」だよね。ピザポテト旨いよねー。(笑)

でもさ、日本酒って実は香りの種類や味が本当に沢山入ってるからめちゃくちゃストライクゾーン広いし、ぶっちゃけ何と合わせてもほとんど美味しい! ってのはあんまり知られてないんだよね。
もちろん、そんなのは鍛え抜かれたアスリートには何のスポーツやらせてもだいたい普通の人より上手いってのに似てて、その上でなお、専門競技と言えるようなおつまみとのマリアージュやペアリングしてあげると最高!!!ってなる組合せはあるんだけど。

つまり、ピザポテトと合わせても日本酒は案外オッケーだったりするんだよね。
最近の日本酒って、昔と違って本当に良い造りの酒が多いから悪酔いもしづらくなってきてるし、あんまり難しく考えずに気軽に、日常的に楽しんでもらいたいなぁ…なーんて。

美味しいし、楽しいよ? 日本酒。もっといろいろ楽しんでいきたいよねー。

なーんて、クダまいてるうちにずいぶん話し込んじゃいましたね。今日は付き合ってくださって、本当にありがと。楽しく飲んじゃいました☆
またぜひ次回も、お付合いくださいね。

明日もまた、酔い一日を~♪ (*´▽`*)ノシ

林 智裕 (Hayashi Tomohiro)

フリーランスライター。1979年生まれ。いわき市出身、福島市育ち。 現在 【Media Rocket】の他、福島の美酒と美肴のマリアージュを毎月お届けする【fukunomo(ふくのも)】、地域の魅力やグルメ情報を発信する【福島TRIP】など複数メディアにて連載中。 また、【SYNODOS (シノドス)】【ダイヤモンドオンライン】【Wedge】【現代ビジネス】などでは不定期でビジネス向けの記事を執筆。 書籍『福島第一原発廃炉図鑑』(開沼博・編、太田出版)ではコラムの執筆を担当。

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