クセになる人続出!出張料理ユニット「マサラワーラー」がつくりだす南インド食体験
みんな元気になるインド料理の秘密とは?(レシピあり)
2018.06.24
■「食べ放題」ではなく「食べさせられ放題」??
クリエイティブ住職こと横山俊顕(よこやま・しゅんけん)住職のいる福島市・安洞院。
ここでは年に数回、ヨガと座禅と季節の食事を楽しむ「テラヨガメシ」が開催されています。
6月16日(土)に行われた「テラヨガメシ」のテーマは「南インドミールス料理食べさせられ放題」。
謎めいていて何とも魅惑的。どんな食事なのでしょう。
さっそく取材に行ってきました。
南インドミールス料理とは、南インド地方の食堂で提供されている日常的な料理。
特徴は、テーブルの上に広げたバナナの葉っぱの上に、ご飯をはじめ、野菜の煮込みやペーストなど、10種類ほどの料理を配膳用のバケツからサーブするスタイル。(記事の最後にレシピがあります)

これが一人前。なくなると足しにきてくれます。まるでワンコそばのインド版!
お寺なので今回は肉や魚、ニンニクやニラを使わない精進インド料理です。
本場式に手を使ってご飯と料理を混ぜながら口に運ぶと、体に優しそうなさっぱりとした野菜の和え物から、ガツーンとスパイスが広がるペースト状のもの、酸味がほどよいまろやかなカレーやシチューまで。味の幅に驚きます。

最初躊躇する手づかみ食べですが、慣れると楽しくなります。
ご飯の上で混ざり合うソースを手で混ぜて食べると味が変化するのも楽しく、スパイスのもたらす多彩な香りと奥行きを感じました。
食べ進めていると、バケツを持ってきておかわりを盛ってくれます。「ストップ」と言わない限りどんどん分けてくれる。だから「食べさせられ放題」なんですね。
第1回目は50名だったミールス料理も毎回申し込みが増え、今年はなんと100人の方が食事会に参加。
お寺の大広間で一斉にインド料理を食べはじめる光景は圧巻。今までに体験したことのないような食のライブ感がたまりません。
今回で2回目という女性は、「昨年は友人に誘われて参加したのですけど、とても楽しかったんです。なので、今回は夫を連れてきました」と話します。
■異色のインド料理ユニット「マサラワーラー」
この南インドミールス料理を提供しているのは、画家の武田尋善(たけだひろよし)さんとシタールなどを演奏するミュージシャンの鹿島信治(かしましんじ)さんによるユニット「マサラワーラー」。

厨房でガッツポーズをとるマサラーワーラーのお二人。左が武田尋善(たけだひろよし)さん、右が鹿島信治(かしましんじ)さん
マサラワーラーとは、マサラ(香辛料・調味料・具)+ワーラー(やつ、野郎)の意味なのだそう。
つまり、「香辛料野郎」という意味なんですね。
ケータリングでは、寸胴など大きな鍋や調理器具を持参し、厨房でスパイスの調合や、豆を挽いて粉にするところから調理します。食材やスパイスは、東京・大久保の南インド人が経営しているお店があり、地方都市でも手に入るので、全く困らないとか。
この日は、豆と小麦の粉を溶いて発酵させ、蒸して作る「イドゥリ」も。今回はイベントスタッフが提供した専用のイドゥリ蒸し器で200個以上作りました。「インド料理は、気前が良くないとだめだから」とお米も9升炊きます。
「30人分以上になると100人分もあまり変わらないです。80人分以上になると、気合が入りますね」(鹿島さん)
インド音楽をBGMにガンガン炒めたり、混ぜたり、煮込んだり。福島の寺院の台所が南インドの食堂に変わります。

大量に料理を準備する厨房
「皆さんがイメージするインド料理は、北インドのものだと思います。南インドは暑いので、料理は傷まないよう酸味が好まれていること、たくさん採れるココナッツを使った料理も多いです。南インド料理は日本のお膳に似ている。煮物や和え物など多彩なんです」(鹿島さん)
南インドに惹かれ続けていた2人はアーティスト活動で出会い、インド料理好きが高じて、“インドユニット”となったのは2008年。
「料理は下手になっちゃう気がして、毎日作っています。日常に混じらせないと上手にならない。2人で今日はこれをつくったって報告しあっているうちに、どんどん品数が増えてきた。パフォーマンスを続けてきたので、料理も発表するように人に食べてもらおうと思ったんです。料理は美味しいことが正義。明確な解答があるところがアートと正反対で、それがいいんですよ」(武田さん)
ユニットを形成してからは、全国のイベントで引っ張りだこ。大人数分の南インド料理を提供してきました。はじめはビュッフェ形式で料理を提供していたのですが、もともとやりたかった料理をどんどん配るミールススタイルに変更してから、急激に忙しくなったのだそうです。
平日は東京日本橋などのビジネス街、週末は日本全国で活動をしている「マサラワーラー」は、結成以来、お店を持たないスタイル。
「出かけていくのがすごく楽しいからです。2人ともじっと獲物を待っていることができないタイプ。でも呼ばれたら行く。意外と受け身。狩猟民族というよりは遊牧民」(鹿島さん)
日本国内でも、場所によって特徴があると言います。
「新潟は、米をたくさん食べてくれます。米が減る量が東京と全然違うんですよ。それに、日本中のどんな地方にいっても、必ずインドにどっぷりハマっている人がいるのがすごい」(鹿島さん)
「インドが偉いんですよ。インドでよかった」(武田さん)
「マサラワーラー」と安洞院の横山俊顕住職とは4、5年前からの知り合い。横山住職が曹洞宗の機関紙で二人を取材したときから、イベントを開催したいと考えていたそうです。その思いは一昨年に実現。50人、70人、100人と参加人数が増える大人気企画になりました。
「マサラワーラーが年一回来るというのがいいんです。また来年行きたいと皆さんに思ってもらえる。今年は早々にヨガからの参加枠が定員に達してしまったので、もっと増やせればと考えています」(横山住職)

マサラワーラーと一緒にミールを配る横山住職。
■過剰なぐらい優しいインド人
学生時代ヒンディー語を学んだのに、卒業後訪れたのがヒンディー語が通じない南インドだった武田さんと、シタールを買ったことから音楽を通してインドとつながった鹿島さん。
以来、南インドを何度も尋ねてインドユニットまで形成した二人にとってインドの魅力とは何なのでしょう。
「人間力。過剰なぐらい優しい。何かを尋ねると、知らなくても自分の持っている情報を総動員して教えてくれる。だから3人ぐらいに聞いて判断する必要があるんだけど(笑)。日本の10倍人がいるのだから、10倍いろいろなことが起こる。そういうことも含めて、インドはすごく楽しい」(鹿島さん)
「時には尋ねたことについてみんなで集まって自分そっちのけで議論を始めることがある。しかたながいから黙って立ち去るんです(笑)」(武田さん)
南インド滞在記のブログからも、インドの魅力が伝わってきます。
■インドのスーパースター・ラジニカーントとの出会い
武田さんは、南インド、タミル・ナードゥ州の俳優ラジニカーント(主演映画「ムトゥ踊るマハラジャ」など多数)のファン。武田さんがラジニカーントの写真をオートリクシャ(三輪タクシー)に貼っている画像をFacebookに投稿したところ、インドからラジニカーント大ファンの日本人として取材され、現地の新聞やテレビに紹介されました。それがきっかけとなり、武田さん、鹿島さんはインドでラジニカーント本人に会う機会をつくってもらえたのだそうです。

2人がイベントで着ているTシャツにはラジニカーントの映画の決め台詞「お前の人生は自分の手の中にある」とタミル語で書かれている。
南インドでは、バースデイカードにラジニカーントの写真を送りあうほど崇められているスーパースター。現地のラジニカーントファンサイトに掲載されると、瞬く間にインドからのFacebookへの友達申請が殺到。「武田さんとの共通の知人のうち1,500人はインドの知らない人」と鹿島さんは笑います。
鹿島さんはFacebookで繋がった日本企業で働きたいインド人に模擬面接をしたり、武田さんはインドの小学校の先生に頼まれて、スカイプで授業に登場したり(ラジニカーントの有名なセリフだけで会話が成立してしまったとか!)と、思わぬ展開が待っていました。
2018年5月には、カナダのインド人アーティストがラジニカーントのファンという共通点でつながり、日本でともにアートパフォーマンスを行うことに。
「インドには3年ぐらい行っていないけど、向こうからインドがやって来てくれるんです」(武田さん)
今年で10周年を迎えた「マサラワーラー」。
「ユニットを組む前、アートパフォーマンスを富士山頂で行ったんです。結成10周年を迎えた今年は、原点に戻る意味でも富士山頂でミールスをやりたいですね。これからも出張イベントを受けて受けて受けまくりたい!」と鹿島さん。
あなたの街でマサラワーラーと南インドミールス料理に出会える日が来るかもしれません。
マサラワーラーのホームページはこちら。
http://masalawala.info/
写真:渡邊清一郎 (swism)
<マサラワーラーのレシピ「サーンバール」>
横山住職が記事を担当する宗侶と寺族のための情報紙「kuu:」。vol.5にて「ハイブリッド精進料理」として掲載された南インドの定番料理、豆と野菜の煮物「サーンバール」のレシピ。ぜひ、挑戦してみてください。(PDF版はこちら)
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