WSETのワインテイスティング試験について~ 世界共通のワインテイスティングメソッド

国際ワイン資格「WSET」のテイスティング試験とは?

2018.08.17

ワイン WSET

シェア ブックマーク LINEで送る

WSET試験に関するこれまでの記事はこちら。

ひそかに人気上昇中の国際ワイン資格「WSET」とは?

ワインの国際資格「WSET( Level3)」はどうやって勉強するか

■中学レベルの英語でワインを表現

WSETのLevel3およびLevel4ではブラインドテイスティング試験がある。目の前にあるグラスの中のワインの外観、香り、味わいを記述する。さらにブドウ品種や産地を問われることも多い。ここまではJSAソムリエの二次試験と大方同じと言っていい。しかしWSETではコンクルージョン(Conclusion=結論)、つまり結局はどのレベルの品質なのか、などまで設問してくる。Diplomaだとさらにその論拠まで記述しないといけないのだ。

以上を英語で記述しなければいけないのだから、難しいと思われるのも当然だろう。しかし実際には思ったほど難しくないというのがとりあえずの私の結論だ。JSAのソムリエ・ワインエキスパート試験レベルの知識を持ち、中学生程度の英語ができれば、Level3ならば最短1週間で試験対策できる。そこで、ここでは主にLevel3のブラインドテイスティング試験について書きたいと思う。

例えば3000円クラスのアメリカのカベルネ・ソーヴィニヨンが出題されたとする。WSETの試験での回答の仕方の例は以下の通りだ。

▶Appearance (外観): This wine is deep ruby colour.(このワインは深いルビー色です)
▶Nose(香り) : It has clean and medium(+) aromas of cassis, blackberry, clove, chocolate and coconuts.(クリーンでミディアムプラスのアロマ香、カシス、ブラックベリー、クローブ、チョコレート、ココナッツなど)
▶Palate(味わい) : It is dry with medium acidity. It is full body, high alcohol, high soft tannin, medium(+) intensity flavours of cassis, blackberry and chocolate. The finish is medium length.(辛口で酸は中程度。フルボディ、アルコール度が高く、タンニンは柔らかく、カシス、ブラックベリー、チョコレートのフレーヴァーが強め。余韻は中程度)
▶Conclusion(結論) : Very good quality. Can drink now, but has potential for ageing.(非常に高いクオリティのワイン。今も飲み頃だが、熟成のポテンシャルもある)

ここまで書ければまず合格できる。わからない英単語がいくつかあったかもしれないが、平易な英文だと思われただろう。世界標準のワインテイスティングは案外とてもシンプルなのである。

なぜこうもシンプルなのか?それはできるだけ客観的に、かつわかりやすく第三者に伝えるためである。あいまいな単語は使わない。例えば甲州ワインには柿の香りがあると私は思うのだが、果たしてヨーロッパ人が日本の柿を知っているだろうか。レモンやリンゴなど、おそらく多くの国で見受けられる言葉を使うのが良いとされる。余計なこと、例えば濁りがない、なども書かない。流通しているほとんどのワインは清澄ろ過しているからだ。書いても減点はされないが、時間の無駄である。

■テイスティング試験で遵守しなければならないこと

ただしWSETのテイスティング試験において絶対に遵守しなければならないことがある。SAT方式で書かなければ、内容は正しくても、採点されないのだ。SATとはSystematic Approach Tastingの略で、WSET独自のテイスティングのメソッドである。

こうして英語で書かれると難しく思うかもしれないが、要は上記の例文のように書けばいいだけである。おのおののワインに応じてこの例文の単語を入れ替えればいい。

その単語はWine Lexicon(WSETのワインテイスティング用語集)にまとめられている。色の濃さや甘辛度などはここにある言葉を使わなければならない。例えば私はワインテイスティングでミディアムフルボディという言葉を使うことがあるが、WSETの試験でMedium-full Bodyと書いても点数はもらえない。書くならmedium(+) Bodyである。試験会場にLexiconを持ち込めないので、チェックすべき項目とその度合いについて覚えておかなければならない。

香りや風味、つまりレモンとかカシスなど具体的なことを書く際には、必ずしもこのLexiconにある言葉を使う必要はない。ただし採点者にわからなければならない。英国人がスイカや琵琶の香りをわかるだろうか。花の香りがすると言っても、それは曖昧だ。バラ、タンポポ、スミレ、ヒマワリ、アカシアなどいろいろありすぎる。ある程度特定できないといけない。

そのためやはりできるだけWSETの推奨する言葉を使うのが確実である。ここの暗記は少し大変かもしれない。怪しい単語は日本人のWSETの講師に訊いておく。たとえば、Gameとかearthという英単語は普通ならゲーム、地球と訳すと思うが、WSETのワインテイスティングではこれらはジビエ、土の香りを意味する。この辺りはちょっとややこしい。

SATを身に付けるにはまずはWine Lexiconの熟読、そして必須受講となっている講義を受けることだ。Level3受講クラスではほとんど毎回SAT式でのワインテイスティングをする。どう書けばいいか教えてくれるはずだ。日本のWSET講師はほとんどJSA試験の資格も持っているので、両者の違いも教えてくれる。

このSAT方式はLevel3だけでなくLevel4 Diplomaでも基本的には変わらない。つまりLevel3のテイスティングでしっかり身に付けておけば、Diplomaのテイスティングでも半分近く点数を取れる。そして何より客観的でより万国共通なテイスティングコメントをできるようになる。

■問われるのは「品種当て」ではない

最後にブドウ品種や産地について。これらの設問はあまり気にしなくてもよい。配点は年によって変わることもあるが、1グラス25点満点中2点前後と低いことに変わりはない。JSAは配点を公表していないが、おそらく低いだろう。ブドウ品種を全部当てても不合格となった話をたまに耳にする。もし当たればボーナスポイントがもらえる程度の話だ。香りや味わいについて的を外さずに書けているかどうかが合否のポイントである。冷静になり、素直になり、そして自信をもって答えよう。

品種を当てるのはとても難しい。私は友人とワイン会でブラインドゲームをすることが多いが、たいてい当たらない。先月、私はドイツワインブラインドテイスティンコンテストに出場した。60人以上の中からなんと3位になれた。しかし予選では6グラス中3つしかブドウ品種を当てられなかったのである。他の出場者もみなそれぞれ答えが違っていた。私はヴィンテージも完全に適当に答えた。そんな私でも3位になれたのである。誤解がないように追記しておくと、この出場者たちはソムリエやドイツワインケナー(日本ドイツワイン協会連合会の認定資格者)などの資格を持つ人たちばかりだ。

世界ソムリエコンクールの決勝ファイナルで、出場者がサンジョヴェーゼとピノ・ノワールを間違えていたのを覚えている。そのレベルですらそうなのだから、ブドウ品種を特定することがいかに難しいかよくわかるだろう。問われているのは品種あてではなく、ワインをテイスティングして感じたことをより正確に、客観的に活字化できるかどうかなのである。

Masahiro Kuze

岐阜出身。群馬県在中。JSA認定ソムリエ、ドイツワイン上級ケナー、WSET Level3の資格を持ち、感性と理性でワインを嗜むワインラヴァー。現在無謀にもWSET Diploma に挑戦中。

シェア ブックマーク LINEで送る

同カテゴリ記事

もっと見る now loading

ABOUTメディアロケットとは

メディアロケットは、福島を中心とした「ローカルな食」の魅力をお伝えし、楽しんでいただくメディアです。 → 続きを読む

メディアロケットで
自社の商品を
PRしたい方はこちら

人気ランキング TOP5

  • ローカルフード

    「夜の果樹園 in ふくしま」〜ライトアップした桃畑で行うディナーを7月28日(日)に開催

    2019.06.27

  • 低温調理

    低温調理のステーキと普通に焼いたステーキ、同じ条件で味を比べてみました

    2018.01.11

  • Sake

    榮川酒造「會津龍が沢 純米大吟醸」 ~夏酒ペアリングレシピ(前編)

    2019.07.06

  • 月刊DOCG

    目にも美しい高級プロセッコを楽しむ〜産地をめぐるワインつきマガジン「月刊DOCG」レビュー…

    2019.06.30

  • Sake

    「金水晶大吟醸」がG20大阪サミットに採用

    2019.07.03

アーカイブ

  • Instagram
  • Twitter
  • YouTube