人気上昇中のワイン産地 「アブルッツオ」で食べた美味しいもの〜イタリア生産地をめぐる旅②

ワインとともにユニークな食文化が楽しめる

2019.05.03

海外の食文化

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「アドリア海の女王」といえば水の都ヴェネツィア。そして「アドリア海の真珠」といえば「魔女の宅急便」のモデルと言われるクロアチアの世界遺産ドブロブニク。

「アドリア海」という言葉の響きには人々の旅情を掻き立てる何かがあります。

今回訪れたアブルッツォは女王や真珠の称号こそありませんが、東にアドリア海、西にはグランサッソなどスキーもできる山々もあり、その両方を一時間以内で移動できるという恵まれた土地です。穴場的旅行地として、最近はヨーロッパ圏内からの旅行客が増えているとのこと。

また、主力であるワイン産業も好調で、イタリアの食メディア「SAPORITA」によれば、2018年の統計ではヨーロッパ圏内での売り上げ増がめざましく、イギリスはなんと対前年比+34%のほかオランダ、スイスで+20%以上。いまちょとしたちょっとしたアブルッツォ・ワイン・ブームが起きているそうです。

アドリア海に突き出す桟橋レストラン。「トラボッコ」と呼ばれる魚取りの仕掛けが先端に。

イ・ファウリが経営する農家ホテル「Baldvino」の別棟。眼下に理想の田園風景が広がります。

前回の記事でも紹介した通り、足の便の悪さがネックで行きにくい場所ですが、でも逆に観光化されていないからこその素朴さと豊かさ、「田舎らしい」魅力があります。私の地元、福島県の奥会津や南会津とどこか共通点を感じました。

アドリア海の魚介、山で育てられる黒豚、地域独特の四角いパスタ、中世から続く伝統の焼き菓子・・・

アブルッツオの旅ではたくさんの個性ある地域食と出会うことができました。

■アドリア海のシーフードレストラン

Tenuta i  Fauri」のヴァレンティーナにお世話になった今回の旅。初日の夜はアドリア海に面するシーフードレストランへ。

日本のレストランだとひとつのコースに海の幸、山の幸が両方入っているのが普通ですが、イタリアでは「シーフードと肉は混ぜない」という暗黙のルールがあり、シーフードレストランならシーフードしか出てきません。

訪れたのは夜の8時半ごろ。日本ではかなり遅い時間ですが、イタリアではディナーのスタートとしてはむしろ早いほうなのだそうです。

暗闇のアドリア海。昼間なら絶対に散歩したい美しい海岸。

私の大好物、「カラマリ(ヤリイカ)」。カラマリにはいろんな調理法がありますが、ここではガーリックとパン粉をまぶして揚げてあります。イカが柔らかくてジューシーなのに驚きます。赤いのはパプリカ。

定番のムール貝のワイン蒸し。アサリとともに。

魚介のフリット。海老、手長海老(スカンピ)、イカ、タコ、小魚など。日本でいうところの「ミックスフライ」ですね。

海沿いのレストランなので、日本だったらミックスフライではなくてきっと刺身盛り合わせがくるところ。イタリアと日本の「魚介」の捉え方の違いを感じます。そしてスカンピの甘さにはマジで感動。

ボンゴレ。太麺でモチモチした生パスタがすごく美味しい。こちらにもパプリカが入っています。

私はかなり美味しいと思ったのですが、同行の食のプロの皆さんは「塩味が足りない」という感想でした。おそらく、アサリが小ぶりなのでそれを計算に入れていなかったのではと分析。なるほど、食材が持つ塩味まで計算に入れるとは。今までの自分のパスタは塩加減に関して無頓着だったかも。パスタは塩加減が大事なのですね。

さて、唐辛子とはさみがテーブルに置かれたので何をするのかと思ったら・・・

こんなふうに、一口食べたあと自分で好きな量を切り辛味を足していくのがアブルッツオ流なのだそうです。自分好みに味に変化をつけていくこのやり方、真似したいですね。

もちろん合わせるワインはヴァレンティーナ持ち込みの「イ・ファウリ」ラインナップ。地元の黒ブドウのモンテプルチアーノを使った「チェラスオーロ」と呼ばれる濃いめのロゼはシーフードにもよく合いました。

風光明媚なところなのに、日本人はおろかアジア人もほとんど見かけません。日本人は初めてだとお店の人に言われました。今時そんなところがあるとは。

ドルチェのあとに出された焼き菓子がとにかく美味しいのでびっくり。甘さは控えめ、でも材料がバラエティ豊かでどれも味に複雑味があるのです。

私は普段焼き菓子は食べないのですが、これで開眼しました。

特に美味しかったのは手前右の「ボッコノット (Boconotto)」と言われる郷土菓子。

汚くてすみません。中はこんな感じです。チョコレートとモンテプルチアーノのジャムを混ぜたものが入っています。

地元で人気のレストランということで、最初は私たちだけでしたが、いつのまにか満席に。笑顔の素敵な女性シェフでした。

■ファミリー経営の一つ星レストランでランチ

「家族ぐるみでおつきあいしているレストランがあるので行きましょう!」

翌日、ヴァレンティーナのお誘いで地元のレストランへ。エントランスにはなんとミシェランの星の赤い看板があって一同びっくり。想定外の「星つきレストランでのランチ」となりました。

ヴァレンティーナが抱えているのは持ち込み用の自社のワイン。

レストランの名前は「Villa Maiella」。ティネリファミリーが経営する、小高い山の上にあるホテル&レストランです。

現役シェフでもあるティネリのお父さんがテーブルに挨拶にきてヴァレンティーナと親しく会話。ファミリー同士の楽しいお付き合いが垣間見えます。

次男でソムリエのパスカルさんがサービスしてくれました。長男さんはシェフ、最強のファミリービジネスです。

レストランのWebサイト。自社農場があり、豚(アブルッツオ黒豚)も育てています。

最初に出てきた白いケーキ状のもの。何だと思いますか。

なんと、ラード(豚の脂)です。塩味がついていてバターのようにパンにつけて食べるのですが、融点が低く、さくっと溶けて、バターとオリーブオイルの間ぐらいの感じです。ラードでイメージするしつこさが全くありません。石の上に載せて花をあしらう見せ方も新鮮。

さあ、これが自慢のアブルッツオ黒豚の子豚のロースト。

2種の部位が楽しめるプレートで、奥に見えるのはバラ肉ですが、皮の表面がカリッと仕上げられていて、脂は口の中でとろける甘さ

豚の脂身は苦手でとんかつもロースよりヒレ派の私でも、ラードとこの料理では「脂っていいね!」と存分に楽しむことができました。

 

こちらは子牛のタルタル、キャベツと地域名産のピスタチオを使ったクリームソース添え。地元産の食材が存分に使われています。

というか、これだけ地元食材が豊富であれば、わざわざ遠くから食材を持ってくる必要もありませんね。

ちなみにこのレストランはワインも充実しており、分厚いワインリストには地元のDOC「モンテプルチアーノ・ダブルッツオ」だけで2ページ以上もありました。価格帯はピンからキリまで。最高級と言われる「Valenti」の2012年が190ユーロ(2万3千円ぐらい)。日本で買うと通販で3万円以上しますので、やはり現地はかなりお得ですね。

この日の私たちのワインはもちろん、バレンティーナが持ち込んだ「Tenuta i Fauri」のラインナップ。ワイングラスがとてもエレガント。

「ファウリはいいチョイスですよ」とパスカルさん。

コースの中には二種のパスタが入っていました。

まず、アブルッツオの名物パスタ「キタッラ」。キタッラはギターという意味で、ギターの弦を使って裁断していたことからつけられた名前。日本のお蕎麦のような形状と食感。子羊のラグーソースに燻製のリコッタチーズがかかっていました。

人気の逸品、ブッラータ(牛のフレッシュチーズ)とレンズ豆のラビオリ。地域産のサフランが添えられています。

中のチーズとクリーミーなソースで、パスタなのに高級感と満足感があります。ラビオリって中に入れるものとソースで様々な変化がつけられるので便利ですね。餃子にも似ていて、日本でも和の食材を使うなどいろいろなことができそうです。

やはりここでも、最後に出てきた焼き菓子プレートに感動。4種ありましたが、どれも素材の良さと手作り感が伝わる上質なお菓子でした。

■アブルッツオ名物「羊の串」

高級店だけでなくカジュアルな店にも連れて行ってもらいました。ファミリーレストランのような大型店で、アブルッツォ名物の羊の串を。こんなふうにどさっと来ます。

日本の牛串みたいな感じですが、もっと細かく切ってあって、串も長いのが特徴。味はシンプルに塩とハーブのみ。これこそモンテプルチアーノ・ダブルッツオにはぴったり合いそうですが、イタリア3日目、すでにワインに飽きがきていた私たちはビールをいただきました。徳利みたいな容れ物が面白い!

羊串は勢いで4本いただきましたが、 ヴァレンティーナは通常20本は食べると聞いてびっくり。まわりのテーブルを見渡しても、みんなフードもドリンクもがんがん頼んでます。イタリア人は男性も女性も食欲旺盛。パワフルな人が多いです。

■中世から続くユーモラスな名物菓子

アブルッツオの焼き菓子、美味しいはずです。歴史が長いのです。

伝統的なお菓子屋さんに連れて行ってもらいました。キエティで1889年から営業している「Lullo」。

中性にタイムスリップしたかのような店内。

こちらの名物は「Nun’s Breast」(尼さんのおっぱい)と言われるクリームをつめたスポンジケーキ。おっぱいなのに、なぜか山が三つある

その理由は諸説あるようですが、このユーモアセンス?もあいまって人気のお菓子で、休日には店の前に行列ができるそうです。

「Nun’s Breast」以外にも様々な焼き菓子。昔ながらの素朴な外観ですが、スピリッツやスパイスが入っているので複雑な味です。

ヴァレンティーナが太鼓判を押すLulloのパティシエ。一見怖そうでしたが、とてもいい方でした。

中世から続くお菓子の文化。アブルッツオの食文化の奥深さを感じます。

 

アブルッツオのスーパーで買ったお土産は、キタッラとモンテプルチアーノのジャム(コンフィチュール)。

キタッラは生パスタが欲しかったのですが売っていないので乾麺を買いました。でも、やはりちょっとお味が違って残念感が。

モンテプルチアーノのジャムはかなり美味しい。日本のジャムと比べて砂糖が少なく果実味が多い感じです。チョコレートと混ぜて焼き菓子を作ってみたいと買いましたが、これだけで十分美味しいので、パンやチーズにつけてちょっとずつ食べていこうと思います。

Hitomi Kumasaka (熊坂 仁美)

ワインと日本酒が大好き。WSET Level3 in Wine, Level3 in Sake(英語)JSAワインエキスパート. SAKE DIPLOMA。 https://kumasakahitomi.com/

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