サルデーニャの羊乳チーズ「ペコリーノ・サルド」の老舗工房へ〜イタリア生産地をめぐる旅④

リコッタチーズと熟成チーズの製法を見学

2019.05.08

海外の食文化

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■人間より羊の数が多い島の伝統チーズ

マルタさんの車で向かったのは、カリアリの中心部から北に40分ほど、マンダス(Mandas) 村にあるチーズ工房「アントニオ・ゲーラウ (Antonio Garau)」。

昨年マルタさんに送ってもらったペコリーノチーズがとても美味しかったのでこの訪問をとても楽しみにしていました。

「人間より羊が多い」とジョークで言われるサルデーニャ。実際それはジョークとも言えず、郊外に車を走らせるとそこかしこに「羊」の姿が。

古来から羊は乳、肉、羊毛でサルデーニャの人々の生活を支えてきました。チーズも当然、羊の乳を使ったペコリーノチーズが中心です。

アントニオ・ゲーラウ社のHPより

1880年創業。以来、伝統製法でチーズを作り続けています。

130年間営業を続ける工場と併設のショップ。住宅街にぽつんとありました。
ゲーラウファミリーがお出迎え。4世代目のベニアミーノさん(中央)とマリーナさん(左)。右はマルタさん。
 店内にはペコリーノチーズがたくさん! 「ペコリーノ・サルド」と呼ばれる独特の風味があるチーズです。サイズも大小様々、小分けパックのほか、量り売りもできます。
この店オリジナルのものがいくつかあり、特に穴のあいたタイプのジニビリ(Zinnibiri)が人気
外側はハードですが中がソフトで、独特のアロマと食感、旨みが凝縮したチーズで、私も昨年、これに魅せられました。一度食べたらハマる系です。
フレッシュタイプのリコッタチーズ。訪問したのはお昼過ぎですが、3つしか残っていませんでした。

■本場リコッタチーズ製造の現場

 工場内へ。リコッタチーズ製造中でした。
チーズの生成過程で生まれた「ホエー(乳清)」を煮詰めて作るリコッタチーズ。リコッタとはイタリア語で「二度煮る」という意味だそうです。
日本では牛の乳で作られたものが主流ですが、もともと南イタリアで羊の乳やヤギの乳で作られたのが発祥。
低脂肪でヘルシーなので健康志向とあいまって、今や世界的な人気商品になっています。
煮詰めたホエーをバスケットに入れるところです。湯葉をすくっているように見えます。

 

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動画を撮っているところ。「日本からブロガーが来た!」ということで、ゲーラウ社のFBページに載せていただきました。

バスケットからケースに入れ、

さらにひっくり返して別のケースに入れて成形していきます。やっぱりお豆腐っぽい。

出来上がり。

こちらではそのままで食べるほか、サラダやお菓子、そしてラビオリに入れたりしています。

 

■サルデーニャ伝統のチーズ製法とは

チーズの熟成庫にも入れていただきました。種類ごと、熟成期間ごとに分けられています。

遠くから見るとわからないのですが、近くで見ると、ガチでカビが生えています。

もこもこの動物の毛みたいなカビ。

大きいチーズはカビも迫力。

驚くのは、2週間に一度、これらのカビを洗い機でひとつひとつ手洗いしているというのです。熟成期間中、これを何度も繰り返します。

想像するだに手間のかかる作業ですが、こういった手作業だからこそチーズに複雑な「旨み」が出るということでした。

さらに驚くのは室温管理。湿度は80%に保たれているということでしたが、壁を見てもどこにもコントローラーがありません。

「機械のよる温度管理はしていません。でもご覧のように壁が厚いので、自然に温度と湿度が保たれているのです」とマリアナさん。

1メートル近い貯蔵庫の石壁。

貯蔵庫は暗く、かすかに自然光が入るのみ。つまり電気代がほとんどかからないわけです。

土地の牧草を食べて育つ羊の乳を、「発酵」という自然作用を使って、時間をかけて美味しくて栄養価が高く、なおかつ保存のきくチーズを作る。

それが地域の人々の食生活をずっと支え続けているのです。

「サステナブル」などという言葉を使わずとも、当たり前のようにサステナブル。

■地のワインに合う地チーズ!

さて、お待ちかねの試食タイム。

マルタさんの提案で、この前に訪問した「アントネッラ・コルダ」の赤ワイン(地場品種のカンノナウ)を手持ちしていったこともあり、ベニアミーノさんもマリーナさんも景気よくバンバンと大きな塊からチーズを切ってくれました。

もう、出来たてのチーズの美味しいことといったら!とにかく旨みがすごい!

で、チーズとワインの相性は?

 

もう、言うまでもないでしょう。

 

 

★サルデーニャの食材のお問い合わせはサルデーニャ・ミア社へ(日本語ホームページ)

Hitomi Kumasaka (熊坂 仁美)

ワインと日本酒が大好き。WSET Level3 in Wine, Level3 in Sake(英語)JSAワインエキスパート. SAKE DIPLOMA。 https://kumasakahitomi.com/

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