同じ「辛口」でも全然違う? 「辛口」日本酒の飲み比べ(後編)〜林智裕の「ウチにおいでよ!」Vol.13

夏こそ飲みたい「辛口の酒」をご紹介

2019.06.06

ローカルフード 日本酒

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みなさま、ごきげんよう! です♪

今日は先月に引き続いて、「辛口」日本酒のお話、後編だよー。(*´▽`*)

先月のお話だと、「辛口」というお酒を「飲み疲れしにくい、長時間飽きずに連続でずっと飲み続けられるお酒」という感じにザックリと分類しちゃいました。もっとも、これも先月お話したように「厳密にはそもそも日本酒に辛口というものはない」前提の上での話だけどね。なので諸説あります、もちろん。(笑)

だからこそ、「辛口」とみんなが呼ぶお酒にも「蔵元や飲み手の好み、あるいは合わせる食材によってバラツキが大きい」っていうお話してたよね。

先月は、キレが強いスッキリしたタイプの「辛口」をたくさん集めてみたけど、今回はそれ以外のお酒も合わせてみますね。

まずは、これ。埼玉県蓬田市から「純米酒・神亀(シンカメ)辛口」です。

さ、まずは一口。きゅきゅーっ! と、どうぞ♪

……

どう?

結構、口の中に強い味が広がる?

スッキリというよりも、ダイナミック! うんうん。そうだと思う。

この「辛口」は、どっしりとした味わいの太さを感じさせる、フルボディのような味わい…でしょ?

今回の神亀さんは日本酒好きの中ではちょっと知られている蔵で、1987年に日本で一番最初に「醸造している全てのお酒を純米酒にした」というこだわりの蔵。熟成させた重厚な米の旨味がギュギュっと詰め込まれた、昔から愛され続けた日本酒の魅力をより強く追及したようなお酒だよ。なんというか、飲んでみると

あ゛あ゛~~~っ(๑˃̵ᴗ˂̵๑)

って、熱い温泉に入ったときみたいな変な声出るというか、五臓六腑に染み渡る~~!!! みたいな感じ? 先月一緒に飲んでいった「辛口」とは、全く別方向の「辛口」って言えるお酒だよね。

そうそう、五臓六腑に…でいうと、こんなのも。

ウチでは割とおなじみになっちゃった富山県の玉旭さんから「五臓六腑に染み渡る純米酒」。そのまんま五臓六腑な名前です。しかし、このお酒のラベルを見てくださいな!!

このお酒には、「辛口」とは書いていないけれど。なんというか、やたらと逞しくイカツイお兄様のラベルのこのお酒が「甘口」……には……

…とても見えないよねぇ……。(´・ω・`)

このお酒、杜氏からは燗酒をオススメされていてね。まあでも、あとで燗でも飲むとして、とりあえずこのまま常温で一口飲んでみて?

 

……

んあ゛あ゛あ゛~~~っっ(๑˃̵ᴗ˂̵๑)

たまりませんなぁ……! グっとくる。沁みるねぇ………

 

こういうお酒には、昔ながらの和の食材が良く似合うかな。たとえば、煮魚とか。

今日は、ホウボウの煮付けを用意してみました♪ ちょっと形崩れちゃったけど、味はぜったい美味しいはず!

ホウボウってアラからすごく良い出汁が出るから煮魚にすると美味しいんだけど、良く考えたら結構変わった魚だよね。平たくないし、羽生えてるし。

調べてみたら、『非常に上質の白身で江戸時代には、「君の魚」といって上流階級の食べるものとなっていた。また、お食い初めの魚でもある。』のだそう。もっとも、今日のはお魚屋さんで300円で買ったコだけどね。

ささ、これもちょっとつまみながら飲んでみて? 美味しいんだから!♪(´ᵕ`๑)۶⁾⁾

─────────

そういえば、この「ウチにおいでよ!」の連載を始めてから、ちょうど一年になるね。最初に食べたのは、「常磐もの」カナガシラの刺身だっけ?

改めて言っちゃうと、この連載のコンセプトは、「お家に呼んだ気心知れた友達と少人数で一緒に飲むテンションで、林のいつもの晩酌を一緒に楽しんじゃおう♪」という感じ。「珍しいお酒や高級なお酒を集めてみたり、高度で専門的なウンチクを語る」ような記事もそれはそれで楽しいけど、あまり肩肘張らずに、友達と一緒に楽しく飲んでるような気分になれるようなお酒の記事があってもいいじゃない?というところから始まってます。楽しんでもらえてると嬉しいけど。

ところでカナガシラとホウボウって結構似てるというかあんまり区別つかないけど、ちょうど1年の区切りに、似ているお魚出せて良かったかもしれないね。今回のホウボウも福島県~茨城県沖の「常磐もの」だしね。(*’ω’*)

 

そうそう。今回のテーマである「辛口のお酒」も、同じ「常磐もの」を食べている福島県沿岸と茨城県沿岸では、結構味が違ってくるんだよ?

たとえば、茨城県水戸市の吉久保酒造が醸す「一品」なんかは、前回紹介したお酒に近い、かなりキレの強いスッキリとした味わい。さっき飲んだ「神亀」と比べてみると、同じ「辛口」でもとても対照的なんだよね。

ちなみに、茨城はサバの水揚げが日本一だったりもするので、この「一品」の吉久保酒造さんは他に「サバ専用日本酒 SABA de SHU(サバデシュ)」なんていう面白いお酒も結構最近出してるんだよね。このお酒は、独自のブレンドでサバの旨味をじっくりと味わいつつ、脂をスパっと切ってくれるお酒なんだとか。

ボクは昔、水戸に住んでいたことあるからこの「一品」は、学生時代に良く飲んでいた思い出のお酒でもあったりして。こないだ3月に偕楽園の梅を観に行ったときに、懐かしくて買ってきちゃった。せっかくだから、SABA de SHU も買ってこれば良かったね。失敗、失敗。

一方で、同じ「常磐もの」でも福島県沿岸のお酒は、また味わいが変わってきて。「神亀」さんともまたちょっと違う味わいなんだけど…なんというのかな。海産物のニオイや脂を「切る」のではなく、むしろそのまま受け容れてしまうような感じ、というべきかな。

たとえば、前にも何度か飲んでもらったけど、コレ。

磐城壽(いわきことぶき)アカガネ。

震災で蔵が被害を受ける前までは、双葉郡の浪江町ってところで造っていたお酒なんだけど、このお酒なんかは結構象徴的でね。

キレが強い訳じゃなくて、そのまま飲むとちょっぴりモッサリした印象さえ受けるような味なんだけど、これがお魚と合わせてあげると…あら不思議!

魚が持つニオイとかを旨味へと変換させて、足し算にしてしまうような味わいが生まれるんだよー? まさにペアリングというか、もはやマリアージュ。魚も美味しくなるし、お酒もめっちゃ美味しくなる!

「常磐もの」は白身魚が中心だけど、他には生カツオとかサンマみたいに強い味の魚も多くて。そのいずれにも合わせてくれる、キレではなく包み込んで食材の潜在力を引き出してしまうような「辛口」。こういう特徴は、双葉郡より南にあるいわき市のお酒、「又兵衛」にもみられるよ。

この「又兵衛」には、かつて「釣りバカ日誌」の映画撮影でいわき市を訪れていた「スーさん」役の故・三國連太郎氏がこの酒を偶然飲んだところ惚れ込んだ、なんていうエピソードもあってね。なんでも、相棒の西田敏行さんが体調を崩して入院し、退院したときの快気祝いにもこの又兵衛が贈られたのだとか。

飲みやすさを感じる少し控えめな香りと爽やかな飲み口が一瞬過ぎったあとに、ぎゅぅぅぅぅぅ、っとした小気味良い飲み口の強さが口の中で膨らむ味わい。
それは口の中だけに留まらず、そのまま身体中を駆け抜けて隅々にまでじんわりと広がっていく感覚。まるで暗くなりはじめた街に、明かりが段々と灯り始めていくような。
…あるいはもっと古風に、薪の炎。もっと五感で熱や匂い、薪が燃えて弾ける音や空気の揺らめきを感じるのにも似たこれは、連なった松明にゆっくりと火が起こされていく…とでもたとえる方が正確かもしれないね。
生命の躍動感を感じさせるわずかな酸味と直火ローストした深煎り珈琲のようなコク味。しかしあくまでも重すぎない飲み応え。やっぱり、五臓六腑に~……って感じだね。

────────

今回は、同じ「辛口」の中でもキレの良さとはまた別の「辛口」を紹介してみました。日本酒は、やっぱり奥深くて多様性の宝庫だね。

そうそう、今回のようなお酒には煮魚を合わせてみたけど、他にもエスニック系の一部なんかも結構いけちゃうんだよ? 辛さと味、ニオイが強めの中華料理とか韓国料理にも結構相性いいんだよね。口当たりを優しくマイルドにしてくれると同時に旨味がじゅわぁ…って広がってくるの。

こういうのとは別に、同じエスニック系でもパクチーが香るような料理にはまた違ってきて、甘さと香りを強く感じさせる華やかな日本酒なんかが相性良くなってきたりもするんだ。

そのうち、機会があれば今度はそういう日本酒も一緒に飲んでみよっか! 楽しみだね。(*´▽`*)

林 智裕 (Hayashi Tomohiro)

フリーランスライター。1979年生まれ。いわき市出身、福島市育ち。 現在 【Media Rocket】の他、福島の美酒と美肴のマリアージュを毎月お届けする【fukunomo(ふくのも)】、地域の魅力やグルメ情報を発信する【福島TRIP】など複数メディアにて連載中。 また、【SYNODOS (シノドス)】【ダイヤモンドオンライン】【Wedge】【現代ビジネス】などでは不定期でビジネス向けの記事を執筆。 書籍『福島第一原発廃炉図鑑』(開沼博・編、太田出版)ではコラムの執筆を担当。

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