なぜ?日本酒資格試験でよく出る「山廃仕込み」のお酒

チーズとの相性も抜群

2019.11.03

Sake

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■日本酒の試験二つ受けてみた、のお話

熊坂仁美です。自他ともに認めるお酒好きですが、それが高じて、よせばいいのに昨年からいろんなお酒関係の資格に挑戦しています。

今年は日本酒の資格二つに挑戦しました。

日本酒の資格って結構いろいろあって、認定する団体によってボリュームもフォーカスも難易度も、そして費用もさまざま。さらに日本酒は今やグローバルな飲み物なので国際的な資格もたくさんあるのです。

その中から、日本語資格と英語資格の同時受験にチャレンジ。周りから「え?無謀じゃないの?」とあきれられながらの挑戦です。

この受験体験は我ながらなかなか面白く、実はここに「ワイン」も入ってくるのでさらに混乱、いつかくわしく書きたいと思っていますが、今日のテーマはタイトル通り「山廃」なので、さらっとだけ。

資格の一つ目は日本ソムリエ協会が認定する呼称資格「SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)」。ソムリエ試験の日本酒版で、試験スタイルもソムリエ&ワインエキスパートと同じです。

一次試験は学科。マークシート方式の暗記試験です。衰える脳みそにむち打って教本の内容を詰めに詰め、8月に受けて無事通過。二次試験は10月、テイスティング(酒4種と焼酎2種)と論述でした。先日発表がありなんとか合格していました。

もうひとつは、ロンドンに本部のある「WSET」の「 SAKE LEVEL3」。日本酒を世界に広めるべく生まれた国際資格で、授業も試験もすべて英語で行われます。実は勉強を始めたのはこちらが最初で、そのときには日本酒の知識が全くなかったものですから、まずは日本語で酒づくりを理解しておこう、それなら酒ディプロマの試験ついでに受けちゃえ、と勉強を始めたのでした。

図らずもの同時並行受験、まあ身の程知らずもいいところですが、これが案外に効果的、ディプロマのほうで学んだ日本酒の基礎知識があるとWSETの英語も入ってきやすくなるんです。こちらは9月末に論述とテイスティングの試験終了。英語で表現するのはやはり難しい。結果はボロボロでしたが、今年中には結果が送られてくると思います。(本部のロンドンで採点をするので時間がかかるのです)こちらはダメだったら半年に一度試験があるので(酒ディプロマは1年に一度)再チャレンジがすぐに可能なんです。

短期間にこんなハードなことができたのは、やはり日本酒が面白かったから。ワインと比べてつまらないのでは、と思ったらとんでもなく、その深さにどっぷりハマり、最後は楽しくて仕方がなかったのです。

■試験によくでる「山廃」

さて、酒ディプロマとWSET、両方の試験で重要だったのが「山廃仕込み」。ご存じでしょうか。最近よく見かけますね。

山廃とは、日本酒の伝統製法である「生酛」をつくる際の「山卸し」というプロセスを省いたもので正式には「山卸し廃止酛」、略して山廃。山卸しは時間がかかりなおかつ重労働なので、それをなくして「酛」を作れないかと明治末期に生まれた製法です。生酛と同様に乳酸系の酸味と複雑味のある味わいが特徴で、お酒にもよりますが、生酛にはない独特の香りと風味があり、色も黄色味がかったものが多く、好き嫌いが分かれるお酒でもあります。

末廣酒造の嘉永蔵に展示されている「半切桶」。山卸しをするのに使われた重要な道具。

山廃仕込みのお酒は全体のわずか9%ということですが、そのわりによく見かける印象がありますね。

日本酒の資格界(そんなものがあるかわかりませんが 笑)では山廃は超重要で、酒ディプロマの二次テイスティングでは、4つの日本酒のうち「山廃はどれ?」が出たし、WSETでも生酛山廃は重要なお酒でした。洋の東西を問わず「試験によくでる山廃」と言っていいと思います

■「台風19号」がもたらした罪

話は飛びますが、10月に日本列島を襲った台風19号。全国で大変な被害となりましたが、私の住む福島県でも県の真ん中を流れる「阿武隈川」が氾濫し、甚大な被害を被りました。

日本酒関係では本宮市の「大天狗酒造」など床上浸水で被災した蔵もありました。しかしなんと言っても深刻なのは郡山市にある精米所が被災してしまったことです。

日本酒を作るには米を磨かなければなりませんが、自前で精米所を持っている蔵は少なく、多くの蔵は精米工場に原料米を渡し磨き歩合を指定して納品してもらっています。

台風による川の氾濫で、各蔵から米を預かった精米所が水浸しになってしまったのです。被災した米はもう使えませんから、蔵元さんは再び米を調達するしかないわけですが、中には代替えの効かない米もあります。

そのひとつが末廣酒造(会津若松)の山廃のお酒「与次右衛門」。実は末廣酒造は、「山廃仕込み」の実験を昭和初期、日本で最初に行った蔵なのです。

末廣酒造嘉永蔵。見学も試飲コーナーも充実している。蔵カフェもある。

末廣酒造の山廃ラインナップ

会津の酒造…水田や精米工場被災 台風19号影響で仕込み見送り

現在、「嘉永蔵」では山廃仕込みのお酒だけで4種あります。
今回米が被災したのは「与次右衛門」。江戸時代、会津の名主であった佐瀬与次右衛門が著した会津地方の自然農法書「会津農書」に従って栽培された「 五百万石」を使用したお酒です。

9月に伺ったときに試飲させていただこうと思いましたが、人気のため訪れた時にはすでに完売で、写真は実は空瓶。今年できるお酒をとても楽しみにしていただけに本当に残念です。幻の山廃を飲めるのは、2年後になりそうです。

19号、まったくもって罪作りな台風です。

■チーズと相性抜群の山廃の酒

ということで、今日は末廣酒造の「純米吟醸 山卸廃止酛」を飲むことにします。

山廃仕込みの酒はチーズとの相性もよく、「SAKE DIPLOMA」の教本にはチェダー系、白カビ系、セミハード系のチーズと相性がいいと書かれています。

今日は「イタリアチーズ通信講座」で送られてきたシチリア産の「ペコリーノ・オリーブ」と合わせてみました。

この講座、テキストとともに毎月3種のイタリアチーズが送られてくるという講座。しかもお店には売っていない、見たこともないチーズばかりで、チーズ好きにはたまりません。

今回は「特産食材とのコラボチーズ」がテーマ。ややハードなペコリーノチーズにオリーブが入っているコクのあるチーズです。

さて、山廃との相性は・・言わずもがなでした。

山廃とチーズ、ぜひ、試してみて下さいね。

Hitomi Kumasaka (熊坂 仁美)

ワインと日本酒が大好き。WSET Level3 in Wine, Level3 in Sake(英語)JSAワインエキスパート. SAKE DIPLOMA。 https://kumasakahitomi.com/

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