貧しい土地から生まれた偉大なワイン〜産地をめぐるワインつきマガジン「月刊DOCG」レビューVol.14
時間がつくるワインの魅力を知る
2020.02.26
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■南イタリア「バジリカータ州」を知っていますか
イタリアの「バジリカータ州」というと、何を想像しますか。
「想像するも何も、そんなん聞いたことないわ!」
という方、たぶん9割ぐらいだと思います。
「イタリアのブーツの土踏まずのところ!」
と答えた方は相当なイタリア通です。
さらに、山がちな、こんな風景を思い浮かべられた方はもう「イタリア博士」と言っていいと思います。
で、私はというと、バジリカータといえば反射的に「バジリコ」!となります。
バジリカータでバジリコがたくさんとれるとか、そんなことではなく。
ワインエキスパートの試験対策でイタリアの州名を覚えていた時、「バジリカータはバジリコ」と唱えていたからです。
ちなみにブーツのつま先「カラブリア」は「唐揚げ」、ふくらはぎのアブルッツォは「油揚げ」。とにかく地名から食べ物を連想するというおバカな記憶法をやってました。
だから私にとって未知の場所バジリカータは、「スパゲッティバジリコ」を連想するだけの存在だったのです。
そう、月刊DOCGのこのワイン「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」を飲むまでは。
■「南のバローロ」
「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」は、交通が不便なバジリカータのさらに山の中でできるワイン。
マガジンの冒頭、おなじみ宮嶋勲先生の解説によると、不便がゆえに経済発展が遅れ、イタリアで最も貧しい州の一つ」とのこと。ワインができる地域はアペニン山脈の南端、標高600メートルを超えるというから南のわりに寒い地域なのでしょう。

写真中央の紫色の文字のところが「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」
このワインをつくるブドウは、ギリシャ起源のアリアニコ種。強いタンニンと酸を持つ黒ブドウです。
このブドウで有名なのはなんといっても「タウラージ」。お隣のカンバーニャ州ナポリ近郊の高級ワインで、「南のバローロ」と言われる長熟型のワインです。日本ではあまり見かけませんが、昨年、ローマ空港のワインバーで見つけたので飲んでみたら、濃厚なフルボディ、複雑性もあって極めて好みの味でした。
タウラージすら見かけないのに、さらに希少な「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」。
こういうレアなワインを紹介してくれるのが月刊DOCGですよね。
今回は「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ」の生産者「ミケーレ・ラルーチェ」の2008年と2011年が送られてきました。
同じワインのヴィンテージ違いが飲める「バーティカル(垂直)テイスティング」ができるというわけです。
2008年といったら12年前。2011年でも9年前です。そんな貴重なワインを飲めるなんて、なんて贅沢。

(DOCGのラベルがついているほうが2011年。2008年は、まだDOCG認証前なのでDOCでの発売)
2011年を抜栓してみると、いかにも熟成したガーネット色です。別の若いワインと色を比較してみました。
左が2018年のメルロー、輝きのあるルビー色です。右が2011年のアリアニコ。落ち着いたガーネット色ですね。
そしていよいよバーティカルに飲み比べ。左が2008、右が2011です。両方ともガーネット色ですが、ディスクの部分を見ると左の2008年のほうがよりレンガ色を帯びています。熟成が進んでいると色もここまで違うんですね。
香りは、2011年はカシス、ブラックチェリー、ブラックペッパー、丁字、メントール。バニラ、チョコ、タバコ、コーヒー、なめし皮。スパイシーでワイルドな印象です。香りの強さはかなりあります。
味わいは、鋭い酸、収斂性のあるタンニン。土壌や気候の厳しさ、それと同時に生命力を感じます。料理ならジビエに合いそうなワイルドさ。私はこういう感じが大好きですが、好き嫌いがわかれるワインかもしれません。
そして2008年。ブラックチェリー、プルーン、タバコ、ペッパー、バニラ、なめし皮。アロマは2011年のほうが果実味を多く感じ、2008年は果実味よりもスパイス系のほうが勝っています。
そして味わいは大きく違いました。ワイルドさが消え、酸味もタンニンも丸くなりバランスが良く、複雑味もさらに加わり、エレガントさものぞきます。余韻もかなり長い。
非常に、非常に美味しいアウトスタンディングなワイン。
私はこれ、大好きです。Geat Wine(偉大なワイン)と言っていいと思います。
まさに時間が作り上げるワイン。
贅沢なバーティカルテイスティングをしたことで、「熟成」がいかに素晴らしい仕事をしてくれるかがよくわかりました。
同じアリアニコのワインでも、ローマで飲んだタウラージはもっと華やかで洗練され、万人受けする印象でしたが、ヴルトゥレは、厳しい自然から来る、無骨で「媚びない」姿勢を感じます。
「万人受けは望んでいない。これがこの土地のワインだ。好きな奴だけ飲め」と言われているような。
■「高貴な精神が宿るワイン」
最後に、宮嶋先生の解説から名ゼリフを。
「アリアニコ・デル・ヴルトゥレもこの地の魂に忠実なワインで、ぶっきらぼうで、無口だが、誠実で、包容力がある。アリアニコらしくタンニンが厳格だが、熟成によりなめらかで深みのある味わいとなる。時間はかかるかもしれないが、待つ価値のあるワインだ」
「アリアニコ・デル・ヴルトゥレは、いかにも南といった風の陽気なワインではなく、厳格で、威厳のあるワインだ。そして、どんな貧しい地にも高貴な精神が宿ることを教えてくれる貴重なワインでもある」
このワインの本質をここまで深く文学的に表現される宮嶋先生。さすがというほかはありません。
そしてこういう知られざる美味しいワインを教えてくれる月刊DOCGは、私にとってはワインの個人教授のようなものです。
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