【取材レポート】和食に合う?オーガニック?あなたの知らないオーストリアワインの世界

知れば知るほど飲んでみたくなる!

2020.03.20

海外の食文化 ワイン

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3月17日(火)、オーストリア大使館商務部で行われた「オーストリアワイン バイ・ザ・グラスキャンペーン表彰式」(オーストリアワインマーケティング協会主催)を取材し、関係者の皆様にオーストリアワインについてお話を伺いました。これまであまり馴染みのなかったオーストリアワインですが、話を伺ううちどんどん興味がわいてきます。食とともにワインを楽しむ文化、和食との相性の良さ、酒蔵のような小規模生産など、日本の酒文化との共通点もたくさんありました。さらに、出していただいたワインが白も赤も美味しくて・・・。

知ればきっと好きになる、あなたの知らないオーストリアワインの世界にご案内したいと思います。

■オーストリアワインがなかなか手に入らない理由

「オーストリア」と言えば、アルプス、芸術の都ウィーン、モーツァルト、ハプスブルク家、ザッハトルテ、ウィンナーコーヒーなどなど思いつくものがいくつも出てきます。

でも「オーストリアワインを飲んだことがありますか」と聞かれて「はい、しょっちゅう飲んでいます」と答える方はあまりいないのではないでしょうか。量販店などではまず見かけることのない、手に入りにくいワイン。実は、それがオーストリアワインの特徴のひとつでもあるのです。
手に入りにくい理由は、その生産スタイルにあります。オーストリアワインは家族経営の小規模ワイナリーが中心で、量販店に置けるような大規模生産はほとんど行っていません。歴史的にワイン文化の国ですが、その多くは国内消費。「ローカルで飲まれるワイン」なのです。にもかかわらず、2019年の日本の輸入量は前年度比29%と大幅に増えました。これはEUの関税撤廃の後押しもありますが、オーストリアワインは「オーガニック」「テロワール」「ペアリング」「地場品種」といったワインの世界的トレンドにもぴったり合うため、ソムリエや感度の高いワイン愛好家を中心に人気が高まっているのです。
ではどこで飲めるかというと、ソムリエのいるレストランやワインバーなどに置かれています。

オーストリア大使館商務部の松本典子さんはこう語ります。「工業的に作っていないオーストリアワインは、量販店に置くことはできません。でも日本にはワインのプロであるソムリエの皆さんがたくさんいて、私たちのワインを理解していただけます。ありがたいことに、一度好きになっていただくと、お店を変わられてもずっと支持していただくケースが多いのです。そんなふうに価値をわかってくださる方に広めていただきたいと思っています」

ソムリエが店を変わっても推し続けるオーストリアワイン。その魅力はどこにあるのでしょうか。

■食とともに楽しむワイン

▶農家が営む、新酒を楽しむワイン居酒屋「ホイリゲ」

オーストリアワインの最大の特徴は「食とともに楽しむワイン」だということです。
その文化をもっともよく表しているのがオーストリア独特のワイン文化「ホイリゲ」です。「今年の(ホイヤー)」を意味するホイリゲは、1年未満のワインの新酒のことで、それを提供する居酒屋も同じくそう呼ばれています。同様の業態で「ブッシェンシャンク」もあります。両方ともワイン農家が敷地内などで営業し、古くからの法律で新酒を消費するまで無税となっています。

食事はセルフサービスのビュッフェスタイル、「ブッシェンシャンク」ではコールドプレートに限られるなどの決まりがあるそうですが、ワイナリーの中で新酒をカジュアルに楽しめる場があちこちにあるというのはワイン好きにはうらやましい限りですね。

新酒を楽しむワイン居酒屋「ホイリゲ」

新酒を出しているワイナリーは入り口の軒先に小枝の束が目印としてぶら下げられているのですぐに営業中だとわかるのだそう。日本の酒蔵の軒先にぶら下げる「杉玉」とよく似ていますね。

▶食を楽しむ文化の歴史的背景

オーストリアワインが食と密接に関わっているのは、その歴史にあります。中部ヨーロッパの内陸部に位置し、8カ国と国境を接しているオーストリアは、現在は北海道ほどの大きさですが、かつてハプスブルク帝国時代には近隣諸国を内包した巨大帝国でした。近隣諸国の多彩な食文化が首都ウィーンに流入し、土着の料理と合わさることで洗練された食文化を築くことになったのです。ワインも宮廷の食事とともに発展してきたため、必ず料理に合うようになっています。

▶世界最大の「オーガニック大国」

これもあまり知られていないところですが、オーストリアは環境保全の意識が高く、耕地面積比率では世界トップのオーガニック大国です。90年代から国として取り組んでいて、ワイン用ブドウに限らずオーガニック農業地には国から補助金が出ます。「オーガニックはなぜいいのか」という消費者向けの啓蒙キャンペーンも盛んに行われています。いま世界的に「ビオロジック」や「ビオディナミ」のワインに関心が集まっていますが、その意味でもオーストリアワインはまさにトレンドと言えるでしょう。

オーストリアは全ての農作物の約20%がオーガニック栽培。ワインの世界では「ビオ大国」と言われている。

■飲食店オーナーから見たオーストリアワイン

▶グラスワインの提供数を競う「バイ・ザ・グラスキャンペーン」

オーストリアワインはソムリエやワインに詳しいプロがいる飲食店で飲めるワイン。そのプロモーションの一環として2017年から行っているのが全国の飲食店を対象とした「バイ・ザ・グラスキャンペーン」です。オーストリアワインをグラスワインで提供してもらい、その販売量を競うもので、昨年の大幅な輸入増はこのキャンペーンの成功も大きな理由でした。

第三回となった昨年のキャンペーンでは全国で45店舗が参加。最優秀賞に輝いたのは東京・大森にあるワインバー「ワイン場 CataCata 」でした。同店はなんと、今年で三回連続受賞を達成。いったいどんなふうにワインを提供されているのでしょうか。オーナーの矢部聡さんにお話を伺いました。

表彰式でインゴマー・ロッホシュミット商務参事官より表彰状を受ける矢部聡さん

▶ワインありきで料理を選べる店ワイン場 CataCata 」

「ワイン場Cata Cata」はどんなお店でしょうか。

矢部聡氏(以下、矢部):カウンターが中心の12席のワインバーで、グラスワインとそれに合ったおつまみをお出ししています。お客様は30代から40代の女性が中心で、お一人で来られる方も多いです。中には5時の開店から12時の閉店までずっとグラスワインを飲んでいるという方も。週末には食事メインのご家族連れもお見えになります。居心地の良い店を作りたいと夫婦で始めた店ですが、その思いの通りになってきているのかなと思います」
提供するのは日本ワインのほか、私がイタリアやスペインで料理を学んだということもあってヨーロッパのワインが中心です。

―お店のオープンが2016年、そして翌年の2017年にはいきなり初受賞をされていますね。

矢部:もともと私自身オーストリアワインが好きだったので、オープン当初から扱っていました。おつきあいのあるインポーターさんからこのキャンペーンのことを聞いて、じゃあ挑戦してみようと思ったのが参加のきっかけです。昨年は特にたくさんの銘柄を扱わせていただきました。100種類はあったと思います。

―100種類!すごいですね。矢部さんにとってオーストリアワインの魅力とは何でしょうか。

矢部:私のワイン選びは、大規模生産のワインではなく、基本的にビオかビオディナミを中心に選んでいます。そういうスタンスで考えていったとき、世界一のオーガニック大国であるオーストリアワインは非常に魅力的です。それともうひとつ、「ホイリゲ」とか「ブッシェンシャンク」の文化があるように、料理と一緒に楽しむのが前提でつくられているワインだということです。他のワイン生産国のワイナリーで、そんなふうに料理ともにワインを楽しむ施設が併設されている国ははまずありません。その部分もうちの店の考え方とよく合っているのです。

― お店ではオーストリアワインとともにどんなお料理をおすすめしていますか。

矢部:キャンペーンの期間中はオーストリア料理もお出ししました。牛肉の煮込み「ターフェルシュピッツ」、そしてパプリカ味のビーフシチュー「グヤーシュ」などはブルゲンラント地方の赤ワインによく合います。小麦粉と卵を使ったショートパスタ「シュペッツレ」は、「グヤーシュ」に添えたり、バターとハーブで和えたものも人気です。

オーストリア料理以外では、当店の定番メニューの「暗闇坂のパテ」もおすすめしています。これは鶏テリーヌに柚子胡椒を効かせたパテで、特にグリューナー・ヴェルトリナーには抜群に合います。また、イベントなどで「フラムクーヘン」というドイツ風の薄焼きピザをお出ししていますが、トッピングにクリームチーズと鰹節、塩昆布を載せます。グリューナー・ヴェルトリナーは旨みとミネラルがあるので、こういった旨みのある和の食材によく合います。リースリングには「白身魚のカルパッチョ」や「サーモンのタルタル」などの魚料理、夏の時期にはセロリなど夏野菜の料理にも合いますね。

***

聞いただけでどれも美味しそうです。矢部さんのお店では扱うワインも料理もよく変えるので、紙のメニューは置かずその都度黒板にメニューを書くスタイル。面白いのは、常連のお客様ほど自分で選ばず、矢部さんのおすすめを聞いて決めるのだとか。お客様との信頼関係と売上には深い相関関係があると思いました。

▶古都金沢のワインバー&スクール「シャトーシノン」

次にインタビューしたのは中部圏地方優秀賞受賞、金沢市のワインバー「シャトーシノン」オーナー辻健一さん。辻さんはシニアソムリエで、日本ソムリエ協会の理事もされています。

右からインゴマー・ロッホシュミット商務参事官、辻健一さん、パートナーの森下和子さん

―「シャトーシノン」はどんなお店ですか。

辻健一氏:(以下、辻)シャトーシノンはワインバーで、創業して12年になります。2階が12席の店舗、3階はワインスクールになっています。金沢は日本酒の文化が強い町で、ワインはわからないという方が多いのですが、そんな方にも気軽に楽しんでいただき、理解を深めていただくように心がけています。男女比でいうと男性がやや多いでしょうか。食事は済ませてから、ワインだけを飲みにいらっしゃるお客様が多いですね。オーストリアワインは食中酒として優秀ですが、食事なしでも十分に楽しんでいただけます。

―お店ではどんなオーストリアワインをご提供していますか。

辻:やはりオーストリアワインは白が中心になりますが、様々なスタイルのワインが揃っているのがオーストリアワインの魅力でもあります。スパークリングや甘口の貴腐ワイン、赤も軽めのフルーティなものからしっかりしたものまでありますので、お客様には幅広く楽しんでいただいています。個人的にはスパークリングのクオリティが非常に高いと思っています。

2年前に夫婦でオーストリアを訪問し、たくさんの生産者さんと出会いました。「こんな生産者さんですよ」と写真をお見せしながらそのワインとともにご紹介すると、お客様は納得してファンになっていただけます。そんなふうにワインとお客様をつなげるのがソムリエの仕事のひとつだと思っています。

―オーストリアワインはどんな料理に合いますか。

辻:オーストリアワインはミネラリーでコクがあり、私たちは『丸まっている』と表現しますが、とがっていないので、出汁や醤油を使った繊細な和食に合います。金沢は和食の町ですので割烹の料理人の方が来られることもよくあるのですが、オーストリアワインをおすすめすると、これはご自分の料理に合うということで、お店で使ってくださったりすることもあります。

***

3年連続最優秀賞の矢部さん、日本酒文化が根強い金沢という地で優秀賞を取られた辻さん。お話を伺って、お二人には共通点があると思いました。ひとつは、お二人ともソムリエで、オーストリアワインはもちろんワイン全般、そして食についても圧倒的な知識をお持ちであること。そしてもうひとつは、偶然にも両店とも12席だということです。一人一人のお客様に目が届き、コミュニケーションできるほどよい席数なのかもしれないと思いました。深い知識と熱量のあるコミュニケーション。それがお二人を成功に導いた秘訣と言えるのではないでしょうか。

■オーストリアワイン大使が語るディープな魅力

最後にお話を伺ったのはオーストリアワイン大使の岡田壮右(そうすけ)さん。岡田さんは会社におつとめの傍ら銀座の寿司店「壮石」を経営し、『オーストリアワイン、江戸前鮓と懐石料理』(集英社インターナショナル刊)の著者でもあります。

―オーストリアワインの魅力を教えてください。

岡田壮右氏(以下、岡田):オーストリアワインの魅力は3つあると思います。一つ目は、ワイナリーが家族経営だということ。畑に目が行き届きやすく丁寧なつくりをしています。二つ目は、テロワール。畑の特徴、気候の特徴、そして地場品種を大切にしているところです。三つ目は、味わいが優しいこと。そのため食中酒として最適で、和食と相性がいい理由でもあります。

―「和食と相性がいい」ということですが、もう少し詳しく教えてください。

岡田:和食は食材を活かす料理ですが、オーストリアワインも食材を活かすワインなので、お寿司、懐石料理、天ぷら、出汁の旨みによく合います。

また、料理とのペアリングという点から付け加えれば、「料理本位でワインを選べる」ということも魅力です。料理をされる方は、ペアリングする際に「料理をワインに合わせる」ということがあると思います。たとえば「ボルドーのこのワインに寄せて料理の味わいを変える」といったように。でもオーストリアワインではその必要がありません。品種も多彩ですし、畑によって土壌、気候が細かく異なり、味わいにバラエティがあるので、料理に合うワインを幅広く選ぶことができるのです。

選択肢の幅が広いのもオーストリアワインの魅力

―オーストリアワインの魅力がよくわかりました。気になるのは価格です。いいけれど割高、ということはないのでしょうか。

岡田:実はワインファンの間では、オーストリアワインのコスパの良さが言われています。コスパにもいろいろあって、大量生産型の低価格帯でのコスパというのがひとつありますが、家族経営、少量生産のオーストリアワインはそこではなく、もう少し上の価格帯でのコスパです。オーストリアワインは畑や糖度によってランクづけされていますが、同様に畑のランクがあるブルゴーニュワインと比べると、同価格帯でもかなり上のランクのワインを買うことができるのです。それも、「高ければ高いほどコスパがよくなる」と言われています。カジュアルなワインも充実していますが、プレミアムランクの上質なワインを求める方にはぜひ一度高いランクのオーストリアワインをお試しいただければ、その価格以上のパフォーマンスを感じていただけると思います。

***

「料理にワインを合わせられる」「実はコスパがいい」。これはオーストリアワインを知り尽くした大使だからわかる魅力と言えるでしょう。深くてどんどんひきずりこまれそうです。

■おわりに

知られざるオーストリアワインの世界、いかがでしたか。たった1時間半ほどの取材でしたが、達人たちのお話はまとめきれないほどたくさんの要素があり、圧倒されました。オーストリアワイン、個人的にもこれからもっと深掘りしていきたいと思います。

まずはお店でオーストリアワインをグラスでいただくことから始めなくては!

▶「あれこれオーストリアワイン」(アドヴァインオーストリア)→https://www.facebook.com/AdWeinAustria/

▶ワイン場 CataCata →http://catacata8.wixsite.com/catacata

▶シャトーシノン→http://www.chateauchinon.com/

Hitomi Kumasaka (熊坂 仁美)

ワインと日本酒が大好き。WSET Level3 in Wine, Level3 in Sake(英語)JSAワインエキスパート. SAKE DIPLOMA。 https://kumasakahitomi.com/

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